2017年は「早乙女選手、ひたかくす」「マグナムリリィ」と二つの女子ボクシング漫画が連載されていて、女子ボクシングの創作作品が好きな人たちにとっては、 夢のような一年でした。「早乙女選手、ひたかくす」は天才女子ボクサーとぱっとしない男子ボクサーの恋と部活動を描いたスポーツラブコメディ。メジャー誌のスピリッツで連載されていて人気も常に真ん中から上位の位置を維持していて、 安定した面白さがありました。しかし、試合よりもラブコメディに重点を置いてるので選手同士が競い合うスポーツ漫画を求めていた人には少々物足りなさもあったかもしれません。一方、「マグナムリリィ」は、女子中学生である緋口百合がプロボクシングの女子世界チャンピオンとの出会いをきっかけに、ボクシングにのめり込んでいく王道の女子ボクシング漫画。ウェブサイトのマガジンポケットで連載されていてボクシングにのめり込んでいく過程を丁寧に描写していましたが9話で打ち切りとなってしまいました。
メジャー誌とウェブ連載。スポーツラブコメディと王道の女子ボクシングストーリーと対極的な二つの漫画でしたけど、それが読み手にとっては、 もう少しこうであったらと望むところを補完し合ってくれていて、楽しい日々に繋がっていたのかなと思います。
しかし、「早乙女選手、ひたかくす」は2019年に完結して、「マグナムリリィ」は二年の休載期間を挟んで2020年に連載が終わり、 2023年7月の今時点では女子ボクシング漫画の連載は0となっています。「早乙女選手、ひたかくす」と「マグナムリリィ」が連載されていたころは、マイナー競技である女子ボクシングの時代がついにきたかという錯覚を抱いてしまいそうでしたけど、 やっぱりそれは錯覚にすぎなかったと思いいたるのでした。思えば、インターネット上で女子ボクシング創作サイトが1999年に誕生して以降、20年以上の月日が経ちますけど、その間に「早乙女選手、ひたかくす」「マグナムリリィ」 が連載されていた時のように女子ボクシング漫画が連載されていて、熱を起こした時があったのかといえば、まったくないのでした。
日本で初めて連載された女子ボクシング漫画(短期集中連載を除く)の「ドレミファイト」はラブストーリーに重きが置かれていて、少女誌に連載されていたこともあって、 いまいちのめり込めず、2007年に連載が開始された「ライスショルダー」は主人公がヘビィ級で変化球的な作品でした。翌年に連載開始の「ごすこん」はゴスロリ趣味の少女がゴスロリのコスチュームでボクシングするというこれまた変化球的な作品で単行本化されることなく早期に連載終了。これ以外に連載された作品はなく、女子ボクシング漫画は不作なんだと痛感する思いです。女子ボクシングがスポーツ漫画として漫画雑誌で長期連載されるのは夢のまた夢なのかなと思い抱いてしまいたくなるほどに……。
しかし、2017年以外にも一度だけネット上で女子ボクシング漫画に熱狂の風が吹いた時がありました。それは2001年のことでした。 female boxing愛好者のページという女子ボクシングの情報系サイトで、管理人のfanさんが、韓国に女子ボクシング漫画があることを見つけてきたのでした。作品名は「DUKE」で全6巻。
しかし、韓国でしか発売されてないために、購入となると高い壁がありました。でも、その問題はサイトの掲示板で、韓国の商品を専門的に扱う日本の通販ショップを紹介してくれた方が表れて解消されました。これなら気軽に購入できると、女子ボクシング創作作品が好きな人たちはこぞって購入。あまりの購入者の多さに後日そのショップにDUKEの専用ページが出来てしまうほど。さらには、通販ショップは韓国の他の女子ボクシング漫画まで紹介してくれるという親切ぶりを発揮してくれて、 その熱狂はDUKE狂騒曲といっていいほどなのでした。
肝心の作品の方はというと、はじめの一歩を思わせる迫力のある動きに、血と汗がリングに飛び散るその試合描写は、男子ボクシング漫画にまったく引けを取らない激しさ。ストーリーは女性であるがためにプロのリングで試合を出来ないでいた主人公がプロボクサーとなって試合をしていくという重厚なストーリーで、プロのリングでの試合自体は6巻のうち2試合しかなかったでしたけど、それでも女子プロボクシングの漫画の魅力を十分に堪能出来ました。
ただ、ハングル語で書かれているためにストーリーの細かい部分が全然分からないこともあって、日本の漫画を読むのと違って、ストーリーを楽しむというよりも絵を見て楽しむという楽しみ方になっていて、ストーリーを語る楽しみが出来ない欠点もありました。そのためか、DUKEを語る人が段々と減っていって長い年月が経ち、DUKEという漫画の存在はネット上でだいぶ薄らいでいるように感じます。
しかし、一方でここ最近になって嬉しい情報も入りました。DUKEが韓国でウェブトゥーンで販売されていることを韓国の女子ボクシング創作作品好きな方から教えてもらったのです。ウェブトゥーンとは韓国で人気のデジタルマンガで、スマートフォンで読むことを想定して作られた縦スクロールで読むウェブマンガです。
韓国のいろんなウェブトゥーン販売サイトでDUKEも新たに販売されていて、紙の書籍が絶版になっても今の時代にまたDUKEが購入できるというのはとても嬉しく思いました。
ただ、漫画として描かれたDUKEをウェブトゥーン用に縦スクロール用にコマ割りし直されていて、ウェブトゥーンは多くがカラーマンガであるのにDUKEは白黒であることもあって、漫画版と比べるとちょっと読みづらいのは物足りなくもあります。
そして、ちょっとわがままをさせてもらって、DUKEがウェブトゥーンで販売されていることを教えてくれた韓国人の方にDUKEのストーリーを大まかに教えてもらいました。
ハングル語が読めないために、絵から漠然と想像していただけに過ぎないDUKEのストーリーが大まかとはいえ知ることが出来て、その瞬間、僕の中でのDUKEの魅力が数倍に膨らんでいったように感じました。
DUKEはこれまでに存在する女子ボクシング漫画の中で最高の漫画だ!
それまで言えなかった思いが不思議と沸き起こってきたのでした。
おそらく、ストーリーが分からなかったことが大きな蓋となっていたのだと思うのです。
そのストーリーを大まかに書くと、
主人公であるチ・ワンギョはプロボクサーであった父を持ち、自身もプロボクサーになりたい願いを胸に抱きながらボクシングに打ち込んでいました。様々な事件を通して、父の友人であるマドンパルからコーチとして指導を受けられるようになるものの、その当時、韓国のプロボクシングでは女子の試合が行われておらず、ワンギョが試合をするのは難しい状況が続いていました。
しかし、韓国のボクシング協会会長の妹であるジン・スンリもまた女子ボクサーとしてプロのリングに立つことを望んでおり、ついにワンギョとジン・スンリがお互いに初めてのプロの試合を行うことが決まり、二人はリングの上で闘うのでした。
ここまでが4巻途中までのストーリーです。全部のストーリーを書くのはよくないと思うので、それ以降のストーリーは伏せています。
韓国らしい重厚なドラマが展開していて、これもまたDUKEの魅力といえます。女子ボクシングが漫画として連載されることは稀ですけど、日本だけに限定する必要はないのかなと。世界の中からDUKEのように素晴らしい女子ボクシング漫画がまた連載されることを願っています。
※DUKEはウェブトゥーン版のタイトルは「DUKE:GIRL BOXER」となっていて、ハングル語では「듀크 : 걸복서」と表記されます。듀크 : 걸복서で検索すると販売ページが出てきます。
入場シーンで派手に登場するジン・スンリ。
リングの上でガウンを脱ぐ姿にも華が感じられる。
ワンギョとジン・スンリがここが勝負所とばかりにお互いにパンチを打ち放つ。果たして勝敗の行方は・・・。
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