東欧予選一回戦チェコ代表マリア・ローレンツ(21)とスロバキア代表イリーナ・ルヴィンスキー(17)の試合はその壮絶な死闘が思わぬ事態を招くことになった。  

 

 

 試合開始のゴングが鳴って以降、両選手は積極的に手を出し続けた。アウトボクシングをするローレンツ、インファイトに持ち込むルヴィンスキーとボクシングスタイルは対極ではあったが、相手を倒そうという共通の意思が相互からは感じられた。この意思の同調が得意の間合いを渡そうとしない一進一退の攻防を生み出しクロスゲームとなっていく。  

 強烈なパンチを何度も浴びた両選手は何度も倒れながらもその度立ち上がり、ついには最終6Rを迎えた。すでにリングの上には幾つもの赤い水溜りが出来上がっていた。1Rから流し続けた2人の血のシミである。凄まじいパンチの打ち合いは、2人が血を流さないRがなかったほとだ。  

 ここまでポイントは僅かにローレンツがリードしているように伺えた。その長身から繰り出されるリーチの長いジャブが手数でルヴィンスキーを上回っている。対するルヴィンスキーも小柄ながらフットワークにより腕の内側に積極的に入り攻撃を試みていた。  

 実際ローレンツは若干雑さが見られていたため何度かカウンターを受けることが多く試合自体は両選手とも攻撃主体であり序盤からダウンを奪い合うなど危険な展開であったことは否めない。 消耗戦となったこの試合最後のRを迎えた両選手は最後の力を振り絞って手を出し続ける。その姿は観客の目にも痛々しく移っていたのではないだろうかと思われる。その荒さによりラウンド後半に差し掛かる頃にルヴィンスキーのカウンターが今まで以上に強烈に鼻を捕えていた。ローレンツの鼻が潰れたのでないかと思われるほどの打撃音がリングの上に響き渡る。

 

 

 

 ローレンツが辛うじて立ちあがると、先ほどの攻防で力尽きたルヴィンスキーは一転してラウンド終了まで終始打たれることになる。後半で2度ダウンも取られると言う事態が発生し、ゴングに救われる形で試合は終了する。

 

 

 

 

 判定は、ローレンツに勝利の軍配が上がった。もし延長があったならローレンツが確実な勝利を収めていたであろう。
各ラウンドの判定要因はやはりローレンツのリーチを生かしたパンチではないかと思われる。
 しかし、判定後、両者自コーナーへ戻る途中に倒れてしまう事態が起こった。担架に運ばれる両選手はそのまま緊急入院することになった。

 一夜明けた本日13時より両代表選手マネージャー、担当医、QOB EU広報担による公式発表が行われた。

 まずは担当医師による怪我について
 ローレンツは肋骨にひびが入っている。ルヴィンスキーは左眼底骨折とのこと。
 どちらとも現在安静が必要であり次以降の試合は当面行えないという見解が示された。
 その診断に基づき両代表サイドともQOBに今大会棄権を申し出た。
 そして本日10時にQOB側が棄権を受理、QOB EU内で審議した結果発表前の正午に両選手の棄権の正式承認と東欧予選のスケジュールの変更は無いことが発表された。
 その後メディア各社から彼女たちの容態、いつ頃インタビューに応じられるか等質問が寄せられていたが、現状の強調程度に留められています、尚意識は回復している模様。