Mistaken-勘違いのシンデレラ-

 

作者:うらしま桃太郎

掲載誌:週刊少年ジャンプ増刊号

 

この作品も90年代初頭の週刊少年ジャンプ増刊号に掲載された漫画です。アイドルとなった主人公の幸子が担当となったマネージャーのアイデアで女子プロレスラーとしてデビューさせ売り出されることになります。そりゃアイドルとして売れないでしょという思いを抱いてしまいますけど、そのマネージャーは一人の国民的アイドルを生み出したもののその後の新人アイドルはことごとく人気が出ないあかん人で、会社の人から社長にいいんですかこんな売り方でと聞くものの社長はいいよ、あいつ(マネージャー)をこれでクビに出来る口実になるし、それに私が彼女の尻に触ったら彼女に殴られたからと言い、そりゃ社長が悪いですよと社員は突っ込むやり取りがなされ、幸子は貧乏くじを引いたことが明かされます。その社長と社員の会話のやり取りが軽妙で面白く、この作品はコメディータッチでこういう調子で展開されていきます。

 

そんな幸子が女子プロレスの団体にいき看板の人気レスラーに挨拶するものの、アイドルがプロレスを甘くみやがってという目で見られ邪険に扱われます。出だしからつまずく幸子に手を差し伸べたのはヒールレスラーたちでした。外見は怖いビジュアルをしていますが人柄が良い人たちばかりでコメディタッチですがそこらへんは現実的なリアリティを感じます。こうして着実にデビューへ近づいていく幸子ですが、当初の目論見が上手くいかなくなったベビーフェイスの看板レスラーは幸子のデビュー戦の相手を買ってでます。マネージャーは彼女の心遣いがありがたいと言いますが、ヒールレスラーの親玉は「馬鹿逆だ。幸子を潰そうとしてるんだよ」と怒鳴ります。しかしお気楽なマネージャーと幸子にはどこ吹く風。そして、試合の日を迎えるのでした。

 

女子プロレスはシンデレラストーリーの一つの形。いわば闘うシンデレラストーリー。90年代においてやり尽くされつつあったこの王道を勘違いのシンデレラという副題通りにユーモラスにそれでいて試合シーンでは激しさのある描写で描いたこの作品もまた輝きを放っているのではないかと思います。